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弟とちがって姉の沙織はいつもと変わらない落ち着いた大人の様子を装い、聞き返していたが、内心では胸が異様に悪戯にざわめかせた。
弟のほうはもはや正気を保つのに必死だった。
「今までなにもしてこなかったことを俺はよか頑張ってきたと思う。けど、なんで我慢しなくちゃいけないのかわからなくなった。血が繋がっているからといって愛する女性を抱きしめることを許されないんだ?
おかしくないか?
そう思わないか、姉さん」
「私は血の繋がり上の関係しかあなたを愛せてない。だから、我慢して」
「嘘だね、そんな素っ気ない態度をしても俺も男だから、姉さんが俺のことをどう思っているのかわかるんだよ。俺もいつまでも子供ではないのだから」
「子供じゃなかったらなにしてもいいの?」
「そんなこと言ってるんじゃない。ただ俺は姉さんがが好きで好きで、姉さんのすべてを食い荒らし壊したいっと熱望してるだけだよ」
「してるだけだよってそれ自体が問題じゃないの?」
「世間体を気にして姉さんは生きてんのかよ。だったら、もっと真っ当な人生を送ろうとしなよ」
「それは無理なことだよ。私はもう人間として生きていないのだから」
「人間じゃないか。どこから見ても人間以外なんでもないじゃないか」
「外見では判別できないけれど、私の中には鬼が凄んでいるのよ」
「そんなのわかんねえよ」
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