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佐々木舞と小町沙織と違うところは父親ではなく兄に性暴力を受けていたからだ。それに耐えかねて顔も知らない父親殺しの女性が師範を務める小町剣道道場に夜逃げして来たのが門下生になったきかけだった。そもそも剣術には少し興味があったものだから竹刀を手にし稽古をつけてもらうとすぐにハマってしまっていた自分がいたことに佐々木舞は憎くてしかたがない過去を竹刀を振るうことで、はらいぬぐいとってゆき、現在に至る。
小町道場にやって来た当初の佐々木舞はそりゃもうボロボロの着物を着て、身体中が青紫に変色した跡がたくさんあり、言葉など発することなどなかったが、今となっては元々の性格もあるが普通の人に比べて口数は少ないがそれなりに喋れるようになっていた。
そんな痛々しい彼女も小町大輔の横で一緒に竹刀を頭上にゆっくりと軌道を確認しながらあげては、一気に顔を踏ん張らせ降りおろす。
それを百回繰り返した後、一息をつくため、佐々木舞と小町大輔は壁際に疲労感のある足取りで移動し、物静かにでありながら呼吸が乱れを整えながら、正座し休憩する。
二人の門下生の朝の稽古に打ち込む態度と、剣術への意識の持ち方を道場の奥から厳しくもあり優しげな眼差しをして見守っていた小町剣道道場の師範である小町沙織が正座姿で静止していた。
朝の稽古途中の休憩に入った途端、山々から昇ってきた太陽の陽射しがたくさんのけがわらしい記憶が刻みこまれた道場内を癒すように射し込んだ同時、道場の扉をいとも簡単な軽い力で蹴破る音が門下生二人と師範の耳に響かせた。
「よぉ、昨夜はご苦労さんだったな」
「なにしに来たの?」
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