6人が本棚に入れています
本棚に追加
穏やかな神妙な表情をしていた小町沙織の顔が少しばかり強張らせ、扉を無作法に蹴り破ったうえに神聖な道場に土足で上がり込んで来た顔見知りの男へ鋭く問いつめた。
「冷たい態度だな」
「とりあえず、靴を脱ぎなさい、我罪龍之介」
「やだっと言ったら?」
「そばにまとわりついている女もろとも床に叩きつけてあげるわよ」
「おー、怖いね!相変わらず」
「相変わらずなのはそっちもおなじよ」
そんな見知らぬ男とやりとりをしている姉を黙って観察していた大輔は面白くないに決まっていて、妙にそわそわしている様子に横に正座する佐々木舞が心配そうに彼の顔を覗き見い、声をかけた。
「大丈夫?」
「なんだよ、そんな顔して」
「だって、すごくイライラしているように見えたから」
「そりゃあ、イライラするよ、あんなちゃらちゃらした女連れの男が姉さんとなれなれしく会話するだけではなく、俺たちの神聖な道場をあんな泥がついた土足で穢されているんだぞ。おまえも俺とおなじ気持ちだろう?」
「そ、そうだけど、あの男の人、普通じゃないよ、絶対に」
「確かに普通ならあんな服をはだけさせ、黒龍の刺青を堂々と見せびらかして外を歩くわけないからな」
最初のコメントを投稿しよう!