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深く深く、揺蕩うように沈んでいた私の意識がふっと浮上した。
眼裏に陽の光を感じながら、もぞもぞと身動きする。
隣の温かなぬくもりに擦り寄ると、んん、と低い声が降ってきた。
お?これはまだ寝てるな。
悪戯心がむくむくと湧き上がってきた。
目を開けて、陽の光の眩しさにうわっとなった。
私たちは揃って粗忽者だから、いつもいつもカーテンを閉めるのを忘れるのだ。そしていつもいつも、朝にうわっとなる。
まったくもう。
懲りない二人だ。
薄眼になって、そばですやすやと寝ている大好きな人の顔を見る。
寝顔はなんだか幼くて、可愛くって愛おしい。
つん、とほほを突くと眉間にシワが出来た。途端に年相応の顔になるから、面白い。
ていっと、私より高いけしからん鼻をつまんでやる。
そうしたら、ぱっと目が開いた。
驚きの早さで両ほほを引っ張られる。引っ張られた拍子に鼻をつまんでいた手から力が抜けて、彼の鼻は自由になった。
「いひゃい~」
「息苦しいんだよ!もっと違う起こし方をしろ」
「起こふふもりひゃなかっは~」
「また悪戯か!懲りろ!」
「はなひへ~」
私の訴えを聴いてくれた彼は手を離してくれた。
ちょっと怒ってるから、唇が真一文字になっている。
私はそんな顔も好きだなぁなんて思って、えへへと笑った。
「大好きだからしょうがないの。諦めて?」
「小学生男子か…。
仕方がないな。悪戯一つにつきキス一つで許してやろう」
上から目線でそう言った彼は、とても優しいキスをくれた。
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