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冬深く
底冷えする夜なのに暖かいのは、いつもは一人で過ごしているこの空間にもう一人いるからだろうか。
こたつの上には鍋を煮立たせているカセットコンロ。立ち上る湯気と熱気のお陰で、薄っすら上気しているはずの頬がごまかされている。
「もうエアコン切ってもよさげだな。」
こたつから脚を出してフリースを脱いだ敦人が床に置いてあったリモコンに手を伸ばす。近くにいた遥希が、ああ、と気付いてリモコンを取り、ボタンを押してからテレビ横のスペースに戻した。
電子音に続いて軽く振動音を立てながらエアコンがのっそりと口を閉じてゆく。
「なぁ、これってどのくらい待つか分かる? 牡蠣と鱈がどんどん縮んで無くなりそうだからそろそろ救出だよな。」
敦人は秋から一人暮らしを始めていた。
英文科の授業に加えて教免課程を取っているために受けている授業数も多い上、実家から通っているとサークル活動をする時間もない。だから夏休みの短期バイトでまとまった額の貯金を作り、さらに家庭教師先まで決めて親に頼み込んだのだった。
学校まで自転車で約十分、この八畳のワンルームは夏休み前に学生が出て空いたせいか相場よりずっと安い家賃で提示されていた。
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