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いつもの遥希らしくない。やけに突っかかってくるし、拗ねたような声色だった。それはつまりどういうことなんだろうかと少し考え、敦人は急に嬉しそうに口角を上げた。
「あのさ、つまりそれって今のキスもそう考えていいの? ハルには、俺とキスしてもいいくらいの好意があったってことだよな?」
「その女の子にキスされた時、敦人はキスされてもいいくらいの好意をその子にもってたってことだよね。」
にべもない言葉に、敦人も流石にムッとした。
「お前さ、そういうのずるい。」
「ずるくない、そっちが最初に言ったことだろ。」
「じゃあ謝るからこっち向いてよ。」
応えることができなかった。敦人が謝らなきゃならないことなんて何もない。自分が何を言ってるのか自覚して恥ずかしさでいっぱいになった。敦人の顔を見たらきっと全部バレてしまう。
真剣に悩んでいる遥希の脇腹に、突然指先が遊んだ。
「なー! 拗ねてないでこっち向けよー!」
「ひ、ずるい! やめろって! ばか! ガキかよ!」
擽ったさに何度手を除けても、遥希の指をかわしながら敦人はしつこく擽ってきた。脚をばたつかせているうちに上に着ていたトレーナーが捲れて、ようやく温まった敦人の指が直接腹に触れてくる。擽ったさよりも、うごめく指にこれまで隠してきたものを導き出されるのが怖くて強く手を掴んだら、内側から指先を絡め取られた。
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