冬深く

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 背中越しに身体が近づいた。敦人の膝が遥希の腿裏に当たり、ハッとしたように離れる。  整えようとしても遥希の荒れた息はおさまらなかった。耳奥で響く心臓の音がうるさくて頭がクラクラする。そんな気持ちを知ってか知らずか、敦人が後ろでゆっくりと息を吸う音が聞こえた。 「ハル、ええと、遥希さん。」 急に改まった口調になり、何を言うのか全く想定できずに遥希は身構えた。 「そんな固まらないでほしいんですが……いや俺がさ、今キスしたせいでちょいテンパって言わなくていいことを口走っちゃったんですが、テンパったのはつまり嫌だったとかそういう訳じゃなくて、むしろ、あの。」  ぐるぐると所在なく歩き回るような言い方には、どことなく遥希の出方を伺うような響きがあった。分かってる、六年越しの付き合いだ。意固地になった時の遥希の扱いはよく分かっていた。 「つまり、ハルはどういうつもりなんかなーって……」  それから、敦人の生真面目な手が遥希の手を捕まえたまま、脇腹から移動して遠慮がちに腰骨の上に触れた。  しまい込んでいた欲望を理性で押さえていたのに、その感触が遥希の中のすべてをひっくり返してくる。 「な、ハル……」  背中に触れる身体、耳元にかかる息、低い声、あからさまに誘いかけてくる。 「なにが言いたいんだよ。」 「今度は、ハルからしてほしい。」  腰にかかる手が腹を這い身体に巻き付いてゆく。微かに後ろに引っ張られ、こっちを向けと促してくる。それに逆らうことなく振り向いた遥希が、敦人の首に手を添えて唇を塞いだ。躊躇いはなかった。
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