冬深く

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 敦人はこたつの上の鍋周りをぐるっと指さして笑った。綺麗にしてあるけど新品ではなかった理由はそれかとは納得した。 「彼女と半同棲してたらしいんだけど、インテリアコーディネーターなんやって。」 「なるほど、だから敦人が買わなさそうなおしゃれな食器があるんだ。」 「そうそう、って微妙に失礼なこと言われてる気がするな。ていうか、彼女が置いてったの、とかじゃないの?」  それは冗談なのか、現実の話なのか遥希には判断が付かなかった。  どちらともともとれる表情で自分の方を見る敦人に、何とか笑顔を作って「いるの?」と返した。だめだ、きっとひどい顔してる。  口角を無理やり上げているけれど、遥希が保とうとしている繊細な何かが今にも崩れそうなのは敦人にも伝わっていた。意地悪かもしれないけれど、それを見るとどうしても気持ちのどこかにむずかゆい嬉しさが沸き起こる。 「うん?」  だから曖昧に語尾を上げながら答えて、また鍋をつつく振りをしたのだった。  そんな様子に遥希はそれ以上その話題を引き延ばしたくなかった。 「一人暮らしってどう?」 「えー、飯と掃除と洗濯と戸締りとか、まあとにかく色々面倒。でも夜中に人が来ても大丈夫だし、親に気を遣わずにしたいことができて楽しいよ。」
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