冬深く

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 やっぱり彼女がいるのかな、と思うと改めて自分の気持ちを心の中のどこか違う場所に追いやらなくては、と遥希は考えてしまう。 「こっちにいないとESS(英会話サークル)にも参加できないし。」  英会話のできる英語教師を目指す敦人にとっては、英会話教室ほどお金のかからないESSに絶対に入りたかったらしい。マイペースにきちんとやりたいことを進めてゆく敦人のそういうところを遥希は尊敬していた。 「敦人は偉いな。うちは英語スピーチとかさせる授業は必須でもない限りとる奴は少ないよ。」 「ふうん、そんなもんなのかな。」  テレビのチャンネルを変えていた敦人は、ふと思い出したようにスマホを手に取り何かを熱心に確認し出した。  「あ! ハル、こっち来いよ!」  という声に反応して遥希が後ろから覗き込むと、サッカーの試合の映像が流れていた。敦人の右肩に手をのせながら、左手の中にあるスマホ画面に肩越しに顔を近づけた。 「何点差?」 「二点差。後二分だし勝つだろうな。」 「後二分か。」  画面に映し出されるスペイン一部リーグの試合の動画には、米粒より小さい選手たちが走り回っている。敦人の肩に顎を置いて見入っていると、遥希が見やすいように画面の向きが変わり、敦人の頭が遥希の頭にくっついた。  このまま横を向けば、頬に唇の触れる近さだ。その距離と反比例するように、本当に触れるために超えなければいけない壁は果てしなく高くて、それを思うと切なくなった。友達としてならいくらでも近づけるのに、敦人を抱きしめることはできない。
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