絶景と肌

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絶景と肌

 なんとか泥棒娘を説得し、旅行者のカップルに盗んだ化粧ポーチを返すことができた。  なんで盗んだなんて聞く必要はない。  この街は貧乏な子供があちこちに放浪しては路上生活をしているなんてザラみたいだ。  だからアレックスはあえて、必要以上は叱ることはしなかった。  やせ細った少女が僕たちの前からはなれようとしたが、  エレナが「一緒にあそぼうよ!」と少女の手を握った。    こうなればエレナお嬢の好きにさせるしかない。  多分、同い年に見えるから単純にほっとけなかったのだろう。  エレナはアレックスがひそかに困惑する様子など目にくらむことなく、少女の手を引いて、  今度こそ目当ての塔へと小走りに行く。  そのあとをアレックスたちが黙ってついてゆく。  さっそく、運もよく人が並んでもいなかったから目当ての塔のなかへすぐにも入れたのは幸運だった。塔は貸切状態だった。  狭苦しいうえにきゅゅうぅな!、段差が高い螺旋階段をのぼるアレックスはもはやバテる寸前だというのに、お子ちゃまたちははしゃいで塔のてっぺんへ向けて一目散に駆け上がって行くものだから追いつけれるわけない。     
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