泥棒少女

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 アレックスとミラクルはエレナの直感どおり、女の子が旅行者に盗みを働いたことに気づかず、「まぁまぁ、おふたりさん、まずは落ち着いてください」、「拙者たちを巻き込まないでくれ」とお門違いの発言するばかりでヤチがあかない。  ものだからエレナはアレックスの背後に身を隠す女の子の手首を掴み、おとなしくカップルの前に立たせては頭を無理やり下げみせた。 「ほら、盗みを働いたことをあやまりなさい」 「わ、わたしは盗みなんてしていないわよ!」  訳もわからず頭を下げさせられた屈辱な表情を浮かべた女の子はエレナの手を乱暴に払いのけ、抵抗してみせる。  が、エレナは確信しているため、ゆるがない自信のある表情して、 「あなたは盗みをしたのよね?!」  できるだけ穏やかな声色で発言したつもりだったが、おもったよりも強く言ってしまい、女の子は悔しそうに涙を眼にためこみはじめ、さすがのアレックスとエレナ、ミラクルも戸惑ってしまった。  旅行者の若い男女は胸に腕を組ませ、呆れている様子だが、余計なことを言うつもりはないらしい。彼等は盗まれたものを返してくれたらそれ以上のことを突き止めたり責めることはしないつもりらしい。  ことに気づくアレックスが、足許を歩いていたミラクルを抱っこしては、エレナの買い物袋を凸凹な石畳の地面に置き、いつもの穏やかな口調と戻り、女の子に発した。 「どんな理由があるにしろ盗みはいけませんよ?」 「うん、」     
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