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穏やかな顔を汗で濡らしたアレックスは内心、勘弁してくれよっとぼやいているのに知らずに。
そんな心境でもゴールはあるもので、螺旋階段の終着点が見えてきた。おのずと足の速度がはやまる。
と、両手のエレナの買い物袋が前後に揺れるのが自然に激しくなる。
すでにお子ちゃまふたりとカラフルたちはてっぺんまで登りつめたらしい。
上のほうから黄色の乙女たちの声が高らかに螺旋階段の薄暗く誰もいない空間に鳴り響く。
アレックスは気づいていなかった。
自分の背後から着実に忍び足で刺客がやってきていることを。
やっとこさ不本意ながら、荷物持ちをしていたアレックスが疲労困憊な表情をしては塔のてっぺんに昇りつめることができたのだった。
ちょっとした達成感が湧きあがる。アレックスは塔のてっぺんから見える昨日きたばかりの街の景色に眼を見張った。
「綺麗な街並みですね、絶景です!」
と、自分のがんばりも含めてアレックスは褒め称える。
穏やかなひと時。
だけど、すぐに無邪気に絶景を楽しんでいたエレナとカラフルに連れられ、ゆっくりと見渡すことは不可能だった。
その一方、いたるところ千切れて汚れた古ぼけては臭う服を着る少女は見慣れきった様子で、たいして感動とかはしてなさそうだった。
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