飛輪

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********** A「士官学校なんて、君も大概、思い切ったことをするよねえ」  彼女はそう言って、先ほど屋台で買ったホットドッグにかぶりついた。薄っすらと積もった雪をざくざくと踏みしめながら、彼女の後を追う。 B「思い切ったことって……僕だって、男だ。やる時はやるよ」 A「それにしてもその帽子とゴーグル、似合わないね」 B「うるさいな」  帽子は入隊した時に学校からもらったものである。無難な配色で気に入っているのだが、どうにも周りの受けはよくなかった。 B「結構あったかいんだよ、これ」 A「昔の兵隊さんみたい」 B「特攻帽って言いたいのか」  昔の日本軍にはそんなものもあったと、教科書で見たことがある。写真で見た彼らも同じような帽子をかぶっていた記憶がある。  彼女はホットドッグの最後のかけらを口の中に放り込んだ。 A「頑張ってるんだね」  そう言われて、自然と誇らしい気持ちになる。 B「……まあ、国のためだから」 A「いざって時は、やっぱり行くの?」 B「そう、なるのかな。上官の命令に従う形ではあるけれど」 A「大丈夫だよ」  彼女は少し微笑んで、僕に向き直った。 A「君にそんな勇気ないの、知ってるから」 B「……うるさいな」  木に積もった雪が地面に落ちてくる。背中を押してくる風に、少し駆け足になった。 **********
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