その男、ロベルタ

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神託祭りとは、1500年前天使が世界に降臨した日を祝って毎年行われる祭りである。 人々は天使への信仰と感謝、そしてこれからも続く天使の加護の願いを込めて、様々な催し物をするのだ。 打ち上げ花火。 讃美歌。 ダンスなど。 花火を見ながら、メアリーが奇妙なことを言い出した。 メアリー「ねぇ、どうしてドミナ帝国は天使信仰国家を築いていると思う?」 ロベルタ「知るかよ。」 メアリー「ドミナ帝国にとって、天使信仰は絶対の善で、悪魔に関連することは全て悪だと思ってるからよ。この帝国には、この祭り以外に楽しいことはほとんどないのよ。報道の自由も表現の自由も規制されている。報道と言っても、帝国軍や聖義軍がギャングを倒したことや、天使や教皇からの御言葉ぐらい。表現に関しても、天使が悪魔を倒したり、聖女がギャングを倒したり。あんまり面白くないよね。」 ロベルタ「ちょっと待て。お前ドミナの者じゃないのか?」 メアリー「そうよ。あたし、マルサーガから来たの。」 ロベルタ「ギャングだらけなんだろ?そこ。」 メアリー「迂闊に手を出さなきゃ大丈夫よ。」 ロベルタ「それが何故ドミナに?」 メアリー「遊びに。」 ロベルタ「マジかよ。」 一方、物見の塔にて。 聖義軍がロベルタとメアリーを遠目から見ている。 「あの女に間違いないか?」 「マルサーガに行く手間が省けたな。」 「どこで捕らえる?」 「国境ギリギリのところだな。でないと、傭兵ロベルタを巻き込みかねないからな。」 「あぁ、貴族も世話になってるからな。」 「できるだけ周りに騒がれないようにしろ。」 「いざとなったら、賞金首としてその辺のチンピラを利用すればいいさ。」
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