月多恋

1/1
前へ
/10ページ
次へ

月多恋

とんでもない回答を出し続ける月多。彼女のワードセンスは、彼女自身の曲からもにじみ出ていた。ミッドナイト日本火曜日を担当して6年。彼女は現在28歳。6年間変わらずに独自の回答を出し続けていた。時には放送コードギリギリ。つまりは、放送事故と、呼ばれるようなワードを連呼するのを慌てて音でかき消したり…スタッフも神経張り巡らせているらしい。 自分のするべきことは、月多の機嫌を損ねないようにする。本番中は、音楽を取りに行く。というような事ばかりだった。 とある日に、いつものように楽屋に水とお茶のペットボトルを並べて待っていたら、彼女が急に走り込んできて、「オレンジジュースと炭酸水を足して3で割った飲み物!早く!」と、いい、慌てて局内の自動販売機を探し巡り、オレンジの炭酸ジュースを買って渡したら、「違う!りんごとパイナップルの間の味の甘いやつ!」とえらく機嫌を損ねてその日の生放送は、終始不機嫌な放送になってしまった。 タレントの気持ちが重要な世界なだけあってADは機嫌を取るのが大変なのだ。 特に月多のように世界的な人間は、よく分からない。 僕のミッドナイトは、これからだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加