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覚えてるかい?僕だよ。彼女と切なく過ごした下手な雪の造形です。なわけないだろうよ。僕だって。ほら、最初の語り手ちゃんね。第三者だよ。覚えてて欲しいな。どうだった?二人の物語。まぁ、厳密には一人なんだけど。いや~参ったね。彼女遂にイカれちまったのかと、そう思ってたらその通りだったんだ。あれは去年のクリスマスからの彼女の恒例行事になってるんだよ。てのも、別れちゃったみたいで。前の彼氏と。フラれちゃったんだね。可哀想に。それも酷いフラれ方したみたいだよ。だって、その例のクリスマスだって、僕見てたもん。今回と同じようにね。だから酷かったのを知ってるんだ。具体的に言うとね、目に痣があったんだ。大きいやつ。例えるとしたら、ちょうど拳ぐらいのサイズあるんだ。びっくりだろ?だって恐らく拳で殴られてるんだから。ハチャメチャに当たり前のこと言ってるだけなんだ。笑えるね。それで彼女どうしたと思う?僕はね、雪に埋もれたりして、特殊な自殺でもするのかと思ったんだよ。シャベルとスコップ持ってさ。軽快に雪の深いとこ掘りまくるんだ。でも結局違ったね。その雪をそのままベンチの所に集めて、彫刻家気取りの奇妙な造形を作り出したんだ。あとはみんなもうだいたい分かるよね?今とほとんど一緒さ。でもクリスマスはほんとにプレゼント渡しちゃったんだ。そのベンチ・マンの首に、手編みのマフラーなんか首みたいなところに掛けてあげて、やんわりと形の分かるぐらいのそれだったんだけど、一瞬で細くなって、彼女いつも通りボソボソッと呟いてる間に、彼コロッと逝っちゃったんだよね。頭部らしき塊がゴロンゴロンって。彼女めそめそ泣いてたんだよ。その生首見つめながら。なぁ、お笑いだろう?それがおっかしくておかしくて、「アッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッーーーーーー」って笑いながら帰ったんだけどね、その日は。それがほんとに、腹筋13個に割れるくらい面白かったから、今日も来ちゃったんだ。ずっとストーキングしてたね。午後の授業が終わったぐらいから。いや~ほんとに、どんな喜劇より笑える悲劇だね、これ。だから今日も「アッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッーーーーーー」みたいな感じで笑いながら帰るんだ。さぁ、今夜はこれにて幕引き。急だけど、風邪引いちゃなんねぇ。またな!
「ガツンッ」
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