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2月14日の昼過ぎ最初の講義が終わって、学生食堂の前ではこんな会話がなされていた。
「この後どこか行く?」
「ごめん用事があって……」
まぁ、日が日だから察しはつくよね。それに「バイトだよ」ってのにはちと早い時間だし。でも仮に「恋人ができたんだ」なんて言ってみろ。友達に手錠をかけられ連行されるに決まっている。そんな年ごろじゃないかまったく。それを分かった上で、きっと思わせぶりに忌まわしきかの集団から去って、颯爽と家路につく。そんな感じだ。残された可哀想な子羊どもはソワソワ。「え、もしかして恋人?」みたいに台本に書かれた芝居をなおも大げさに大根しちゃってるから目も当てられない。ほんとにそう思ったから、その集団が見えなくなるまで遠くに来たのを確認すると、腕時計に目をやって、フゥっとくだらない新入社員の真似をして、公園での待ち合わせの時間までに色々と準備をしなきゃならないのを確認。ほら、服なんかちゃんとしたのじゃないと駄目だからね。だってそうだろ?最低限のマナーでしょうよ。他にも色々持っていかないといけない。きっとね。たぶん2、3時間後になるんじゃないかな会うのは。ちょいと期待しておいてよ。なんてったって、恋人に会うんだ。
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