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こうやって座って待っているのも悪かない。寒いけどね。雪はいい感じに積もってる。ちょうど恋人と過ごすのに最適な案配だと思う。やっぱ背景はロマンチックでなけりゃ意味がない。でも、第三者が見たら酷いと感じるだろうよ。だって、今座っているのは公園のベンチだよ。しかも運の悪いことに、住宅地のど真ん中。道もアパートも大学生だらけさ。変じゃない?微塵もロマンチックじゃないって問題。だってさ、大学生カップルなんか、普通もうちょっとマシなところで待ち合わせるでしょ。小学生じゃあるまいし。実際この公園、放課後は小学生の巣窟なんだ。今日はそれにしては雪なんか多いから、各々の親なんかに「こら~アンタだめよ!今日は!」みたいなこと言われて「え~でも友達と外で遊ぶ約束しちゃった」なんて小さな抵抗試みるけど、「それなら家でゲームでもしたらいいじゃない」と言われるんだ。たいていの場合、各々そう言われているから、結局最後には両者家で別々にゲームなんかして、お外で遊んじゃう約束なんか最初から無かった日になる。最近の小学生ってそんな感じじゃない?分からないけど。
そんなくだらないこと考えてたらちょこんと座ってやがるんだ。これは驚き。例の恋人さ。いや、嘘うそ。視界にはちゃんと入ってたよ。でもちょっと粋な感じに、面倒くさい男を演じてみるんだ。そんなもの演じちゃう時点で面倒くさい男なんだけどさ。とりあえず出方をうかがうわけ。もしかしたら精魂込めて作ったチョコなんかをぶん投げて来るかもしれないしさ、そうじゃなけりゃその場で既製品のチョコを食べまくるかもしれないじゃないか。こんな風に言うのがさ、ちと変わってるんだよ、彼女が。
実際どうなったと思う?もったいぶらずに教えるとね、やっぱり変わってたよ。だから別に声を掛けるとかそういうんじゃなくて、「ポイッ」と俺の膝の上に置いちゃったんだ。何か一言ぐらい発したらいいのにね。「これ、作ってみたんだけど」とか、「本命チョコだよ!味は保証しないけど!テヘペロ」みたいなこと言い出したらそれはさすがに一回病院で診てもらうけど、そうじゃなくて、なんか好意とかをね、こうやって付き合ってるんだから言ってくれたら……なんて思うわけ。普通でしょ?でもね、そう言いながらも、頬なんか赤らめて俯いてる彼女を見ちゃうと「あぁ、可愛い。やっぱ好きだわ」ってなっちゃうんだけどね。ようは惚気って話。
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