とける

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 そうだ。二つ目のタイムリミットだ。これっていうのが、さっきより切迫した問題。それが何かって言うと、忘れてるかもしれないけど、彼女への返答だよ。色々甘いこと言ってくれてたでしょう?「私の血が……今食べて……」みたいな感じで。だってそりゃそうだよね。俺だって逆の立場だったら嫌だもん。色々考えてるうちにポカンと忘れちゃってたんだ。許して欲しいんだけど、そうもいかないよね。これはほとんどパリピ達のせいなんだけどね、本来ならば。でも今はそんなことどうだっていいわけ。目の前の俺が、ただ返事をしなかったってだけの事象なんだから。彼女からしてみれば、外的な要因なんかどうでもよくて、全て「俺」という人間の言動に神経が集中しているんだ。しかもよりによって、繊細なんだよ。つまり、感じやすいってこと。それで、やっぱ気になるじゃん。怒ってるかな~って。パリピの襲来から顔まともに見てなかったわけだし。恐る恐る見てみることにしたんだ。ちゃんとね。  その瞬間、ふと思い出したんだ。大した事じゃない。この場合を除いては。つまり今みたいな時には、必ずしも思い出す必要があった。ごめんよ、ダーリン。疑ったりして。小さなことで気に病みすぎることってあるよね。まさしくそれだったんだ。単刀直入に言うよ。彼女の心はチャレンジャー海淵より深いじゃないか!ってこと。そうなんだよ。だから謝ろうとした時、心中お察ししまくりました!みたいな感じで、堂々とすり寄って来たんだ。なぁ、感動もんだろ。彼女の優しさに乾杯だよ。それで何をしでかすのかと思うと、優しく手なんかを重ね合わそうとしてくるんだよ。二人の距離を詰めに詰めてね。キスできる距離感にはあったけど、それ以上を求めてくるんだ。もうドッキドキのバックバクで、彼女の方もそうじゃないかなって思うと、心配にさえなってくるんだ。早めに溶けちゃったりしないかな、とか。それでも彼女は近寄ってくる。こういう時はクレイジーな積極性を醸し出すんだ。そういうところがまたいいよね。もう彼女の手がそこまで来てるんだよ。温もりを感じるレベルにね。あぁ、これは改めちゃうと、キスより興奮するかもね。いつもは違うよ。今回だけってこと。 「グシャリ」
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