君に贈る花束

10/22
前へ
/22ページ
次へ
 私は深呼吸をして、妻の手を握った。いつも家庭を切り盛りして頑張っているその手は、所々、手荒れが見られた。 「私は幸せ者だ。こうやって、君と一緒にいられるだけで、本当に幸せなんだ」  上手い言葉を言いたくとも、私には、それを考える余裕はない。だから、これだけはわかっていて欲しい。 「いつもありがとう」  ホワイトデーだとか、国際女性デーだとか、本当はどうでもよかったんだ。少しでも君に、ありがとうのお返しをしたいだけなんだ。  私たちは互いに笑い合った。ここはイタリアではないけれど、日本でも、愛を謳うことは出来る。 「ねえ、どうやって作ったの?」 「……秘密だ」 「ええ、教えてよー!」 「そうだな。まあそのうち、な」 「早く私にも教えてよー」 「やっぱり教えない」 「どうしてよ?」  理由は簡単だ。 "毎年、私が君に特別なミモザを贈るから。だから、これからも元気で私の隣にいてくれよ"  この想いをそっと胸に。妻がくれる愛を、私も贈りたい。それでも私の心の奥を読んだように君は言った。 「じゃあ私は毎日、美味しい食事を作ってお返しするわね」  悪戯っぽく笑う君に、愛しさが込み上げた。この地で君と出会い、家族になり家庭を築くことが出来て本当に幸せなんだ。 「次の休みは、久々に海でも眺めに行こうか。子供たちもドライブに行きたいだろうし。その後でハンドクリームも買いに行こう。いつも頑張ってくれてありがとう。本当に本当に、ありがとう」  君がくれる全ての愛に、沢山の愛と感謝を込めて。いつまでも君に恋をしてる私から伝える精一杯の思いを。     
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加