君に贈る花束

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 誰かが海を眺めにドライブをしている頃。海から程近いマンションの一室で、とある男女が時を一緒に過ごしていた。  一番近くにいた人は、実は一番遠い人だった。いつだって俺の先を歩いて行く。いつだって俺の考えの先を考えている。  俺はいつだって後をついて歩くヒヨコと同じだった。 「おーい。佐藤!」 「……え、うわあ!」  急に声をかけられて、俺は椅子から落っこちてしまった。 「もう。そんなに驚いちゃって。大丈夫?」  呆れた様に微笑みながら伸ばされる手。少し夏の日焼けが残る細い腕に、俺は手を伸ばした。 「あ、ありがと」 「どういたしまして」 「まな。何か用事でも?」  どうやら俺は無神経だったらしい。盛大なデコピンをおでこに食らってしまった。 「ね、この神前結婚式がね、色々チョイス出来るってさ。どうかな? あとね、子供用の着物とか多くて……って子供も出来ていないのにこれは早過ぎか」  彼女は段取りが上手だ。 「あ、そうだ。佐藤のお父さんって椎茸無理だったよね? お膳の煮物、一人分だけ別の小鉢で頼もうか」  彼女は気配りも出来る。昔からそうだった。私生活だけではなく、仕事でもそうだった。
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