君に贈る花束

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 思い返せばちゃんと蘇る、この六日間。コンビニ弁当ばかりだった。掃除は、洗濯は。会話は。全部彼女がいてくれたから、俺は生きていられたんだ。  思い出したくないと、子供の様に駄々を捏ねていた。子供の様に拗ねて突き放してしまった。 「くそっ……!」  俺はロッカーにスーツの上着を叩きつけた。その足で、俺は彼女のいる場所まで走った。  どれくらい走っていただろう。バス通勤のひょろい身体で隣町まで走った。港市からはそう遠くはない。が、体力が続かない。  淡い夕闇が濃紺の闇に変わり、また淡い夕闇になっていた。時間などどうでも良かった。 「はぁはぁっ……神社にっ、いなか、った……この辺りは、もう……っ、畜生!」  疲れが襲い、その場にしゃがみこんだ。小さな柱を背もたれに、俺は項垂れた。背中から、優しい川のせせらぎが聞こえた。どうやら、俺が背もたれにして休んでいる場所は橋の欄干の様だった。  目の前に自分の影が出来た。後ろを見れば、川の向こう、山の奥は日の出に合わせて明るくなっていた。 「……ははっ。本当に俺って馬鹿だ……あーぁ、くそっ……」  会いたい。会いたい。会いたくて堪らない。目の前が滲む。自業自得だ。そう思い、俺は上を見上げようとした時だった。 「え、佐藤? 何でここに? え、ちょっと大丈夫?」  横から声がした。幻聴だと思ったが、声の方向を見ると、ちゃんと人が立っていた。 「……ほ、本物? やっと、やっと……会えたっ!」  俺は最後の力を振り絞り、駆け出した。驚く彼女を尻目に、俺は思い切り抱きついた。 「ちょ、え、えっと……ああもう! 聞きたいこと沢山あるしツッコミどころ満載なんだけど!」 「……ちょっと黙ってよ」  夢じゃない。幽霊でもない。  俺は彼女をひたすら抱き締め続けた。
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