君に贈る花束

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 一番近くにいた人は、実は一番遠い人だった。いつだって俺の先を歩いて行く。いつだって俺の考えの先を考えている。  俺はいつだって後をついて歩くヒヨコと同じだった。でも、それも今日で終わりだ。 「すっかり朝だね。帰ろうか」 「……始発で乗って、間に合うかな……いや、始発乗ってタクシーか、それよりも、俺臭いし着替え……」 「私は真っ直ぐ帰ってまずは掃除だなー! 気分転換に花でも買って飾ろうかー!」 「どうしよう……俺、クビになったりしたら……! 二十七歳でクビになった経験が二回あるとか笑えない! あ、一回は倒産か!」  ビビりの俺の背を、彼女は思い切り叩いた。 「盛大に怒られて絞られて来なさい!」  そう言って彼女はしわくちゃな笑顔で歩き出した。  この笑顔をみるだけで勇気が湧くんだ。 「ん」  俺は手を差し出した。彼女もそれに応えた。  手を繋ぐ二人のシルエットが、朝焼けに溶け込んでいった。  遠くから、カモメの鳴き声と共に潮風がゆっくりと静かに流れていた。
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