君に贈る花束

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 朝焼けの中。潮風を感じながら仲睦まじく歩く男女が、近い将来の約束をしている頃。港市に降り立った男女がいた。  彼女は、いつだって息つく暇もなく徹底的に俺を追い詰める。  昔はまだ可愛いげがあって俺にぞっこんだったはずなのに、いつの間にか甘酸っぱい青春は終わっていた。 「あなたって昔っからいっつも肉まんよね」 「美味しいものは何年経っても美味しいからさ」 「もう春だって言うのに」 「君は東京出身だからわからないかもしれないけど。道産子(どさんこ)の俺にそれを言ったらおしまいだよ」  暦上は春とはいえ、北海道の春はもうしばらく先のこと。 「二人で旅行に来たことなかったから新鮮ね」 「あいつの実家のクレープ食べて評価してやるんだよ……あの生意気な海に」  俺の言葉を遮る様に、彼女は俺の頬をつねった。 「まだ根に持ってるの? オープンキャンパスだっけ? カラフルで目立つとか何とか海が言っていたこと」 「花音。これはそんな単純な問題では」  音楽大学の後輩に先に結婚される悔しさ。それも初対面から生意気だったあの小娘に。そんなことを知ってか知らずか、彼女は淡々としていた。 「海の結婚式にお呼ばれしてるんだから、いい加減素直にお祝いしなさいよ」 「……花音のそういうとこ、好きだよ……」  別に嫌いと言うわけではない。ただ、あまりにも唐突で予想外だったんだ。  いつだって俺はあいつを好敵手として見ていたのに、だ。専攻楽器は違ったが、良く顔を合わせた仲でもあるのに、だ。     
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