君に贈る花束

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 三月八日。少し早い春の陽気が、夕方まで香っていた。 「ミモザの花を予約していた者ですが……」 「あ、お待ちしておりました! さあこちらでエプロンを着用してくださいねー」  今日は帰りが少し遅くなると、妻に伝えてある。後は、私が準備をするだけだ。 「はい! それでは午後六時半。ミモザの花ご予約オプション、ケーキ講座を始めます!」  料理などしたことがない。網の上で何かを焼くくらいししたことがない。それもキャンプに行った時だけだ。  だが不思議と不安はなかった。  むしろ越えるべき山が有る様に湧き立つものがあった。
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