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箱を開けると、そこには、甘い香りのミモザが咲いていた。
「あらまあ! とっても綺麗ね! どこのケーキ屋さん?」
「実は、私の、その。手作り、なん、だ……」
こんなにも緊張するのは、いつぶりだろうか。冷や汗が手に滲むのがわかるほどに、緊張している。年甲斐もないと、笑われてしまうだろうか、呆れてしまうだろうか。
またもや妻は呆けた顔をして、その表情は次第に泣き顔に変わっていった。
どうして泣くんだ。もしや、気に入らなかったのだろうか。泣かせたいわけではないのに。
淑やかに泣く妻が、真っ直ぐに私を見た。私は緊張と不安のあまり、生唾を飲み込んだ。
「ありがとう、あなた」
「え、いや……」
「こんなに沢山の素敵な贈り物を頂けて、私は幸せ者です。いつまでもあなたの側にいて、あなたに恋をしていられるもの。このケーキは、ミモザに見せたケーキなのね」
「あ、えっと。うん。一度焼いたスポンジケーキを、フードプロセッサーで細かくして、クリームの乗ったスポンジに振り掛けるんだ」
こんなことを言いたいのではない。言いたいことは、伝えたい思いは心の中でずっと、溜め込んで秘密にしていたんだ。
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