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緑の瞳 1
夏の終わりの濃い緑がいきなり切れて青空が広がった。
車の窓から射し込む陽射しが眩しくて、わたしは目を細めた。
世界政府のロゴ入りの車に空港から乗ってすでに三時間あまり。その間、車内はずっと静かだった。
まるでお葬式みたいに。
もっともわたしと隣に座る林・ソフィア博士は文字通りお葬式の帰りだったんだけど。
空港からの道のりは、高い建物は見るまに減って淋しい風景になった。
アジア地区の極東の小島。
世界政府発足当時の三百年前頃には、高い技術力と経済力で政府内での発言力が強かったはずなのに。
ひとつの事故がこの地区を変えたことは知ってる。
もっとも最近は資源の枯渇や環境の汚染から、月や火星のコロニーに移住して地球全体の人口は減少傾向だから、どこも似たような感じではあるけど。
とはいえ、どんどん深い森に入っていく。もしかしてこのままソフィア博士ごと始末されるんじゃないかって……思わないでもなかったけど。考えすぎだった。
向かう先は、ほんとに辺鄙なとこなのね。
「間もなく到着です」
大柄な運転手がぼそりと告げた。
「ソラ、見える? あのドームの中に住むのよ」
わたしは答えずドームを見た。
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