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かなりの大きさだわ。森のなかにボウルを伏せたみたいな透明な屋根がある。
そうこうしている間に車はコンクリートでつくられた巨大なゲートの前で止まった。見るからに重そうな鉄の扉がゆっくりと左右に開く。ゲートををくぐる前には身分証明の厳しい審査。指静脈認証に眼底毛細血管照合。それから車ごとの除染。オレンジの灯りのともる長いトンネルを進む。ゲートを五つ過ごして、いちばん手前の建物の車寄せに入るまでには結構な時間を要した。
「林・ソフィア博士、お分かりですね。今後のこと」
わたしを挟んで反対側に座っていた痩せぎすでスーツ姿の、いかにも事務官といった男が博士を見た。
「承知しています。さ、ソラ降りて」
博士は縁の赤い眼鏡の奥から、柔らかな視線をわたしに投げた。
二百才近い年齢なのに、美しい人。長い銀髪を後ろにひとつにまとめている。腰も曲がっていない。すっとした立ち姿が凛として気品があるわ。
わたしは博士に促されて下車した。
見上げるドームの天井はとてつもなく遠くに見えた。
事務官は二言みことソフィア博士と言葉を交わしたあと帰っていった。
「ソフィア博士、おかえりなさい」
「カナタ、わざわざ出迎えなんていらなかったのに」
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