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B「ああこれは……」
どう説明すればいいだろうか、言葉が詰まる。
正直脱ぎたいけど、「それを被れるのは勇敢な者の証だ、そして戦士としての自覚を忘れぬよう身につけるように」だなんて上の人に言われてしまったら、脱ぐわけにもいかない。
B「えっと……航空機ってのに乗る時に被るやつだ、あとこれはゴーグル」
A「ごーぐる……こーくーき? っていうのは何? 乗り物なの?」
B「ああ、空を飛ぶんだ」
A「なあにそれ! 鳥みたいに飛べちゃうの?」
B「まあそんな感じだ」
A「ずるいわあなただけ!」
B「いやそんな簡単に……」
A「今まで忙しかったのもそれに乗ってたからなのね!」
B「まあ……そうだけど」
A「でもどうして乗ってるの?」
困る質問が来てしまった。あまり航空機の話題について掘り下げて欲しくなかったけど、仕方ない。思った事をガツガツ言うタイプだもんな。
そういうところも良いところではあるのだけれど。
こうなったら嘘でもいいから言おう。
B「空が飛べればさ、何処へでも行けるだろ? いつかはこの街から出てさ、いろんなところを見てみたいなって、それが俺の夢だから。上手く飛べるように練習中なんだ」
強引過ぎただろうか。
A「夢……いいわね、その夢!」
目を輝かせてそう言った。
A「私も鳥みたいに空を飛んで、いろんなところを見てみたいわ!」
A「上手く空が飛べるようになったら、私も乗せてくれない?」
B「ああ、乗せてやるよ」
咄嗟についた嘘だったけど、今の一言で本当に夢になってしまった。でも絶対に叶わない夢。
B「まだまだ先の話だけどな」
A「でも楽しみだわ、鳥よりも上を飛んで、こっちの鳥の方が凄いって自慢してやるのよ」
そうだ。飛んだら捨て身で突っ込んで尽きる、凄く勇敢な鳥なんだぞ、こっちは。
A「こんな話してたらもう着いちゃった」
彼女の家だ。時間の流れは早い。もう少し話したいけど、そんな事を言うわけにもいかない。
B「明日は……一日、忙しい」
A「そっか! 頑張ってね!」
B「ああ」
A「じゃあまた明後日ね! またね!」
B「また明後日な」
明後日、俺はここにいるかな。
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