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「もし…もしもだぞ。
もし亮も上永のことを覚えてて……最初から互いに知り合っている状態で出会ってたら、それはまた今とは違った未来があったんじゃねーかな、とか思ってさ」
何を言い出すのかと思えば雄輔らしくもないことを。
「それはそれで面白かったかもな。でもなんでいきなりそんな話を?」
「なんでっつっても、ふと思っただけなんだけどな。もしもお前が上永のことを知ってて、上永の気持ちに最初から気がついてたとしたら……ワープロ部は今とぜんぜん違ったんじゃねえかなって、そう思っただけさ」
それは……どうだろう。
今までそんなことを考えたことがなかったわけでもない。
雄輔の言う通りそれはそれでまた、今とは違った未来が訪れていたことだろう。
もっともっと二人で練習に励んで、もっと早いうちから結果を出して……
そんな未来も、あったのかもしれない。
「まあでも、俺は今の自分とこの状況に満足してるよ。これが俺の高校生活だ」
でも結局のところ、これが俺の答えなのだ。
俺はここで三年間過ごして、いろんなことがあった結果、今俺と雄輔はここでこうしているんだ。
それは間違いなく現実の出来事であり、俺が今ここにいる理由なのだ。
「お前はそう言うと思ったよ」
俺と雄輔は、誰もいない静かな部室で、二人で笑い合った。
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