第一章 卒業前日、最後の日。

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「もし…もしもだぞ。 もし亮も上永のことを覚えてて……最初から互いに知り合っている状態で出会ってたら、それはまた今とは違った未来があったんじゃねーかな、とか思ってさ」 何を言い出すのかと思えば雄輔らしくもないことを。 「それはそれで面白かったかもな。でもなんでいきなりそんな話を?」 「なんでっつっても、ふと思っただけなんだけどな。もしもお前が上永のことを知ってて、上永の気持ちに最初から気がついてたとしたら……ワープロ部は今とぜんぜん違ったんじゃねえかなって、そう思っただけさ」 それは……どうだろう。 今までそんなことを考えたことがなかったわけでもない。 雄輔の言う通りそれはそれでまた、今とは違った未来が訪れていたことだろう。 もっともっと二人で練習に励んで、もっと早いうちから結果を出して…… そんな未来も、あったのかもしれない。 「まあでも、俺は今の自分とこの状況に満足してるよ。これが俺の高校生活だ」 でも結局のところ、これが俺の答えなのだ。 俺はここで三年間過ごして、いろんなことがあった結果、今俺と雄輔はここでこうしているんだ。 それは間違いなく現実の出来事であり、俺が今ここにいる理由なのだ。 「お前はそう言うと思ったよ」 俺と雄輔は、誰もいない静かな部室で、二人で笑い合った。
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