第一章 卒業前日、最後の日。

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「もし…もしもだぞ。 もし亮も上永のことを覚えてて……最初から互いに知り合っている状態で出会ってたら、それはまた今とは違った未来があったんじゃねーかな、とか思ってさ」 (……もし、本当にそうだったら今の俺はどうなってたんだろうな) バスに揺られながら俺はさっきから、雄輔が部室で言っていたことをなんとなく考えていた。 こんなにこのことが気になっている自分自身を最初は少し疑問に感じていたのだが、その疑問はものの数秒ほどで消滅した。 考えたところで今更どうしようもないこんなことを考えるなんて、俺はもしかして未練があるのか? 「……未練、全くないと言えばウソになるかもな」 さっきも少し思ったが、もし…俺が最初から瞳のことを覚えていたら? もっと早く、瞳の気持ちに気がついていたら? もっともっと、全国に通用するための練習を、あの時からしていたら。 瞳がもしアメリカに出張にならずにずっとあの部屋にいたら。 考えれば考えるほど、今とは違う別の可能性へと想像が膨らんでいった。
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