第一章 卒業前日、最後の日。

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「あ!山崎先輩に鈴野先輩!お久しぶりです!」 「お、来たか。おはようクマさん」 それから練習を見学すること約10分、最後の部員の「熊埜御堂 細(くまのみどう ささら)」さんが部室の戸をゆっくりと開けてやってきた。 「クマさん」の愛称で慕われる彼女が、現在の我が月が平高校ワープロ部の部長である。 「ここ最近全然来てなかったですけど、やっぱり忙しいんですか?」 クマさんはマフラーにからみつく長い髪に悪戦苦闘しながら鞄を置いた。 「うん、俺は車校とバイトをはしごして回ってるからなかなか休まらない……でも何もしないよりはよっぽどマシだと思ってるよ」 「俺はもう実家の仕事の手伝いさせられてるよ」 これでワープロ部が全員集合だ。 俺たちはずっとこの五人でやってきたのだ。 五人……と言ってしまったが、正確に言うと「六人」だ。 今この部屋にいるのは、三年生が二人と一年生が三人。 二年生が一人もいない。 しかし、全く誰もいなかったわけではない。 一年前の…ちょうど今くらいまでの時期まで、ここには二年生の選手が一人いた。
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