3.たった1つの希望

3/5
62人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
玄関を開けて、家の中に入る。 「おかえりなさい」 私のお母さんが、台所で夕飯を作っている。 「ずいぶん、帰りが遅いではないか。誰かと遊んでいたのか?」 珍しくお父さんも早く帰ってきていた。最悪という言葉が浮かんだ。私は家族が嫌いだ。なぜなら… 『今日は図書館で勉強していたから、遅くなった。 ごめんなさい』 「家で勉強しなさい。あの学校は頼りない」 「そうね」 私の気持ちを理解せず、自分たちの思うようにしたいため。私はうんざりしていた。私には本音を語れる人がいない。たった1人を除いて。 『お父さん、お母さん。1つ聞いてもいい?』 「なんだ?」 『ハルの手紙、知らない?ハルはずっと送っていてくれてたって』 私がボードにそう書くと、2人とも罰が悪そうな表情をした。 「ああ。お前には友達を選んでもらいたいと思ってな。あれは捨てた。お前があの子のことを忘れると」 友達を選ぶ?私はその言葉を受け入れたくなかったし、友達を選ぶのは親ではなく、私ではないのだろうか? 忘れるもんか。そんなことで!一番大事な友達のことを。呆れて悲しい気持ちも湧かない。 『ずっと捨ててたの?最低!』 「お前のためを思って。友達を作ってもまた前の学校と同じことが起きては辛いだろ?」
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!