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隆之とは小学生からの付き合いで、近所の友達グループの仲間。その中でも隆之と僕だけ同じ高校に進学したもんだから、自然と彼と過ごす時間が長くなった。性格は真反対。図書係、読書クラブ一本で義務教育プラス高等学校を過ごした一人っ子でマイペースなヒョロい僕に対して、昔から足が速く、最終的にはそこそこ強い陸上部の部長を務め上げた長男気質のヤツは、物怖じせずハッキリ話すのもあって、目立ちはしなかったが多分男女問わず一目は置かれていた。少なくとも僕のように気安い奴とは思われてはいなかったと思う。背が高く、顔も良いもんだからスポーツ刈りと呼ばれる地味な髪型でも女子からお声はかかっていた。それなのに、部活が終わった後はほとんどを僕らと遊んでいたから彼女はいなかった。もったいない。本気でそう思っていた。俺たちに操を立ててる、友情の証だな、と笑いあった幼馴染みグループは今月で解散する。僕と隆之は県内の同じ大学の違
う学部に進学する事が決まっていた。幼馴染みのうち2人は来月から市内で働く。1人は美容師になるべく東京の専門学校に進学。
「とりあえずこれ、当てとけ」
子供の頃から遊びに来ていて、勝手知ったるダイニングテーブルに肘を付いてそっぽ向く隆之の左頬は赤く腫れ、口角には血が滲んでいた。僕が突き出した保冷剤を一瞥して鼻を鳴らすと、
「いらね」
しゃべると痛むのか、小さく顔を歪めた。学生服の首元のホックがほつれ取れかかっている。
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