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「私達って、付き合ってるのかな」
ある帰り際、駅のホームの上で呟くように彼に問いかけた私の声が想像以上にか細くて、自分でも少々驚いた。
今、この場所でそれ言うんだ? そう言いたげな表情で彼は苦笑しながら私の方を振り向いた。
「……今は仕事の事で余裕が、ない。彼女を作る余裕もないんだ」
3度も抱いておきながら彼はそう言った。
何かが崩れていく音を聴いた時、初めて僅かでも期待していた自分がいた事に、気が付いた。
「それって、好きで居てくれてない、って事?」
声が震えそうになる。
眉尻を下げ私を見て微笑む彼の表情は少し哀しそうに見えた。
「……だとしたら、あんな事しないよ」
手にしていたペットボトルのプラスチックフィルムを、いつの間にか引っ張ったり剥がしたりして、ベロベロに垂れ下がったフィルムを震える指で弄びながら私は黙って、暫く項垂れているしかなかった。
違う。
そんな言葉が聞きたいんじゃない。
彼が夢に向かって頑張っている事も理解している。
独立を目指して日々時間を削りながら努力をしている事も知っている。
私も何か力になりたい、と本気で思っていた。
だから、毎日会いたい、なんて決して言わない。
2人で会える時間をいつもギフトだと思って過ごしている。
欲しい言葉は、そうじゃないの。
たった一言告げてくれれば、この心は穏やかに漂う湖のように彼に水面に映る光だけを届けてあげられるだろうに。
「今は余裕がないだけだよね? じゃあこの先数パーセントでも可能性はあるって事だよね?」
彼は曖昧な表情で私を見つめていた。
この時彼の目には私がどのように映っていたのだろう。
極めて冷静に声が震えないように注意しながら、だけど懇願するように問いかけた想いは、彼にも充分解ってしまうくらいこぼれ出してしまっていたに違いない。
自分がボロ雑巾のように感じた。
どこからか聴こえてくる二人組の女の子達の笑い声が、自分に向けて嘲笑されているかのような妄想すら生まれる。
いつの間にか、私が乗る一つ前の電車が駅のホームに滑り込むように到着した。
離れてしまう時間が迫っていた。
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