第1章 夜明けの兆し

6/11
前へ
/11ページ
次へ
2. 僕はそれからも度々、喫茶店に行くようになった。話すのが好きな訳じゃないが、どこか落ち着く感じがして、気に入っている。大抵行くと、久保さんや如月さん、成瀬さんがいるので、時折話している。僕は基本的には、黙って本を読んだり、宿題をしたりしていた。 そんなある日、僕はクラスメイトの女子が店の奥から出てくるのを見かけた。その女子は僕に気がついて、僕に話しかけにきた。 「清水くん、ここに来るんだね。清水くんも悩み相談?」 「いや、ただ単に本読んだりするだけ、だけど…。悩み相談って、前にも聞いたけど、何なの?」 「心さんが、恋愛とか人間関係とか、どんな話でも聞いてくれて、それにアドバイスしてくれたり、同調してくれたりするの。だから、友達に言えない悩みがある時はここに相談に来るんだ。このお店、一部の人には悩み相談で有名なお店なんだよ。清水くんも何か話してみたら?何かアドバイスしてもらえるかもよ。」 そう言い残すと、その女子は帰っていった。人と話すのが苦手だけど、一人が苦ではないない僕に、何を相談しろというのだろうか。 そう思っていると、如月さんが奥の扉から出てきて、僕に向かって手招きをしてきた。僕は仕方がなく席を立ちそこに向かった。扉を開けると、シンプルな内装の部屋があって、椅子が二つと机が一つあり、如月さんは椅子に座っていた。 「たまには、清水くんの話が聞きたいと思ってね。さっきいた女の子から、清水くんが学校でどんな人か聞いたんだ。」 「何て言ってました?」 「内緒ー。企業秘密だよ。」 如月さんは、意地悪く笑った。恐らく、あまり友達がいなさそうとか、そんな感じだろう。実際、友人は全然いないからな。 「何で、そんなに人と話すのが嫌なの?」 「理由ですか…?単純に、人に関心がないからですかね……。」 そう言うと、如月さんは驚いた表情をしていたが、僕は人に関心がない人間がいても良いと思っている。だって、誰しもが人と話すのが好きな訳では無いのだから。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加