第1章 夜明けの兆し

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僕はどうすれば良いか分からず、とりあえず席を立ち、店を出た。店を少し出たところで、待てっと呼び止められた。後ろを振り向くと、そこには成瀬さんがいた。 「君は、清水だったっけ?ねえ、心怒らせたの?」 成瀬さんは、どこか楽しげに聞いてきた。その態度の理由は分からないが、とりあえず頷いた。 「へえー、面白いね。あの子、滅多に怒らないんだよ。怒らせるなんて、君何て言ったの?」 僕はざっとさっきまでの如月さんとの会話を話した。 「なるほどね。清水は、心がなんで怒ったのか分かる?」 「分からないです。人に関心がないということが、気にくわなかったのでしょうか?」 「ざっと、そんなので合ってるよ。心にとって君は、昔の自分を見ているようだから。君が人に関わらないことによって得られるもの、の答えを見つけられるといいね。」 成瀬さんは、そう言って去っていった。あの人が何のために、僕を呼び止めたのかはよく分からなかった。昔の自分というのはどういう事だろうか…。僕は色んなものに思考を張り巡らせながら、帰路についた。
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