第1章 夜明けの兆し

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3. 翌日になっても、答えは見つからない。見つからないというよりは、どう言えば良いか分からないのである。そもそも、一人でいることが孤独だと決めつけることがおかしいのである。孤独とは、寂しいと思うから孤独なのであり、寂しいと本人が思わなければ、それは孤独ではないはずだ。いや、如月さんは決めつけた訳では無いのだろうが。彼女は何に怒っていたのだろうか……。無関心であることの何がいけない。人は残酷で、今日友人であった人が、明日には話さなくなるということも有り得なくはない。だから、要は僕は他人を信じられないのである。かといって、自分のことが好きな訳では無いのだが……。誰にも干渉されない日常こそが、一番の平穏だと僕は思っている。 とりあえず、不快にさせたことは謝らなければいけないと思い、放課後になると喫茶店へ向かった。喫茶店は相変わらず、少し人がいるぐらいで、静かなBGMが流れているだけの空間だった。久保さんが近くにいたので、僕はいつも通り珈琲を頼んだ。 「ねえ、昨日心ちゃんと何かあったの?」 「怒らせてしまったみたいです。」 「それは珍しい。よっぽど酷いこと言ったんだね。」 僕は勝手に悪者扱いされた。事の顛末を話すのも面倒だったので、まあ良いかと思い、何も言わなかった。久保さんも僕が何も話す気がないと分かると、仕事に戻っていった。少し珈琲を飲みながら、宿題をやっていると、奥の部屋から如月さんが出てきて、僕の姿を見ると、少し気まずそうな顔をしていた。 「清水くん、ちょっと話良いかな?」 僕は頷き、奥の部屋に向かった。やはりシンプルな内装がどこか落ち着く。席に着くと、如月さんはいきなり頭を下げた。 「昨日はごめんなさい。急に不機嫌な態度を取って。」 「僕の方こそ、すみません。言い方が悪かったと思います。ただ、何がそんなに不快だったのか、結局分かりませんでした。」 そう言うと、如月さんは微笑んで、少し昔話をしようかと言い、話し始めた。
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