寒灯

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

寒灯

ピユン。 スマホが鳴く。アプリの通知音。 1日1回は耳にする音。可愛さを感じる電子音。友達とはこのアプリで会話する。メールは使わない。周りのみんなは、設定をマナーモードかサイレントにしてある。 けど、私は音を鳴らす。 大切な友達のメッセージだけ、ピユンと鳴く。 「さむい…」 思わず呟いた。風が制服のスカートを(めく)る。周りには誰も居ない。何も気にせず、太ももに冷たい空気を(なぞ)らせた。 カーディガンの右ポケットに手を入れる。萎れた桃の花とスマホが入ってる。ポケットの中でスマホを握りしめた。 おそらく、あの子からのメッセージだ。 でも、今は返せない。 私は考えなくちゃいけないことがあるから。 思わず、あの言葉を呟いた。 「考えている時は、邪魔されたくないの」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!