4人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
寒灯
ピユン。
スマホが鳴く。アプリの通知音。
1日1回は耳にする音。可愛さを感じる電子音。友達とはこのアプリで会話する。メールは使わない。周りのみんなは、設定をマナーモードかサイレントにしてある。
けど、私は音を鳴らす。
大切な友達のメッセージだけ、ピユンと鳴く。
「さむい…」
思わず呟いた。風が制服のスカートを捲る。周りには誰も居ない。何も気にせず、太ももに冷たい空気を擦らせた。
カーディガンの右ポケットに手を入れる。萎れた桃の花とスマホが入ってる。ポケットの中でスマホを握りしめた。
おそらく、あの子からのメッセージだ。
でも、今は返せない。
私は考えなくちゃいけないことがあるから。
思わず、あの言葉を呟いた。
「考えている時は、邪魔されたくないの」
最初のコメントを投稿しよう!