小鳥のなきごえ

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あの日の私は、その言葉を信じていた。 どれだけ話をしても飽きない。華やかな装丁の言葉事典みたいなヒノル。小鳥のように笑う私の友達。そんなヒノルを、嫌いになるなんて無いと思っていた。 でも、高校に入ってから変わってしまった。 変わってしまったことで、私とヒノルの関係は崩れ始めた。 私は、ヒノルのメッセージを無視する様になった。 理由は2つある。 1つ目は私の順位が変わった。 中学の時は20位以内にあった私の名前は、高校では3桁の順位に埋もれていた。 背伸びをして入った進学校は、私に日々の努力を求めていた。井の中の蛙、公立中学の生温い順位で満足していたことに気づく、私は自分が許せなかった。初めての中間テスト以降、家での余暇を全て自習に当てた。 ヒノルとメールのやり取りをしていた寝る前の1時間すらも、私は机に向かっていた。 2つ目は私のケータイがスマホに変わったこと。 スマホに変わったことで、メールではなくアプリでのやり取りになった。 メールとは違ってチャット形式になっている。画像や動画のリンクも簡単に送れて、絵文字等もかなり豊富だ。短文をポンポンと送りやすく、誤字があっても、直ぐに新しいメッセージを送れば済む。既読機能がある。 そんな便利な性能を好きになれなかった。 高校が別れてから、ヒノルの連絡量は多くなった。1日に何通も送られてくるメッセージ。 俳句や短歌の様だったヒノルの文は、詰まらなく単純なものに変わった。面白かったヒノルの言葉達は、絵文字やスタンプで簡略された。 私に余裕が無かったからかもしれない、飽きが来たのかもしれない。それでも、スマホを何度も鳴らされてると束縛されてる気分になる。
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