小鳥のなきごえ

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『石 岬 名本』 ヒノルから謎のメッセージ。私は声に出して読んだ。 「いし…みさき…みょうもと」 意味がわからず、首を傾げる。勉強で煮詰まった頭、深夜の眠気で目が霞む。ヒノルが何が言いたいのかわからない。 あぁ…もう、下らない。こんな謎解きに頭を悩ましてる暇ないんだ、私は得意な英語をしっかりモノにしたいんだ。成績をあげて順位を上げなきゃいけない。 沢山のことを学んで…私は…。 スマホを持つ手から力が抜ける。静止状態が続いて画面が暗くなる。黒い鏡に私の顔が写った。 私は…どうなりたいんだろ。 『高校に入って沢山の事を学んだら、私もヒノルみたいになれるかな…』 初詣の時に呟いた、私の言葉を思い出した。私は胸を締め付けられた。締め付けられた胸から零れるように、ヒノルの言葉が現れた。 『ずっと友達でいようね。ユキヨ』 ピュンと、笑うヒノルが思い浮かぶ。 ヒノルから貰った言葉が、陽の光の様に差し込んだ。 私の心に思い出を芽吹かせる。 小鳥みたいなヒノルは、思い出と言葉を運んでくる。 そして、私の感情に雨を降らす。 梅雨のような長く暗い雨じゃなく、優しくて心地よい春雨だった。
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