小鳥のなきごえ

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ヒノルは右手でケータイを受け取ると、左手で自分のスマホを開く。そして2つの電子機器を物凄い速さで操作してみせた。 ふわふわロングのヒノルは勉強が出来る方ではなかった。部活での活躍も全く聞かない。 でも、この会話がキッカケに印象が変わった。成績が20位以内じゃなくても、ヒノルは頭が良いみたい、何だか魅力を感じる。 「はい、出来たよ。 あと、ちゃん付けしないでヒノルって呼んで」 「ありがとう。ヒノル」 ヒノルからケータイを受け取ると、登録してないアドレスからメールが届いていた。hiruno.hinoru.@…、ヒノルのアドレスだ。メールを開く。 『ヒノルだよ!よろしくね。 名前の登録はユキヨにしてほしいなぁ~。 今週の土日どっちか空いてない?遊ぼーよ。 使い方、色々教えてあげる!』 読み終えると、私は返信を打ち始めた。 夕暮れから夜に変わる。あたりに藍色が染み渡っていく。ケータイ画面が顔を照らす。ぎこちなくカコカコと文字を打つ私、それをニコニコと見つめるヒノル。 文を打ち終わって顔を上げると、ヒノルは私の後ろの方を指さした。 「見て、桃の花」 振り向いた先は校舎裏だった。フェンスに(もた)れかかるように桃の木が植わっている。陽が落ちて薄暗いが、ぽんぽんと可愛い花が咲いているのが見えた。 「もう春だね」 そう言ったヒノルからピュンと聞こえた。 ヒノルのスマホからもピユンと音が鳴る。 『ありがとう。ヒノル。日曜日あそぼ。』
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