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立ち上がってポケットに手を入れてみる。やはり、何もない。
「ん……?」
ジャケットの裾が不自然に尖って見える。ゆり子はその場所を触ってみた。
「あ――――!」
思わず大声が出た。
「った――――!」
指輪は、ポケットの内布に空いた小さな穴から滑り落ち、外側の布と内側の布の間に入り込んでいた。裾の固い部分にはまっていたから、丁寧に触らないと気が付かなかったのだ。
ゆり子はフローリングに座り込んで、布を摘んでじりじりと指輪を押し上げ、失くした指輪を無事に手に入れた。
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