リップレス×ミッシングリング 後半

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   6 「みつかってみれば、ほんとたわいないことだよ」  右手薬指に嵌めた指輪を目の前に掲げる。  子供の頃、ダウンコートの中に同じ様に百円玉が落ち込んで、しばらくしてから見つかって、嬉しかったことを思い出した。  そのとき、唐突にふうの顔が浮かんだ。ゆり子は心の中にあった小さなしこりが消えていることに気がついた。 「……もしかして」  クローゼットの中の上着の裾を、ひとつひとつ確認していく。 「やっぱり……」  就職してすぐに買った秋冬物のコートに固い感触を見つけた。さっきと同じように、下から少しずつ上に運んで取り出す。 「こんなとこにあったのか」  それは、当時つき合っていた春山に貰った指輪だった。  当時、失くしたことを告げると、春山は言った。 「いいよいいよ。また買って上げるから、気にすることないよ」  それで、ゆり子は探すのを止めたのだ。  指輪には小さな青い石がついていた。幸せを呼ぶ石だと説明を受けた記憶がある。  ゆり子は、しばらくその指輪を見つめていた。
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