2人が本棚に入れています
本棚に追加
7
シャワーを浴び直し、化粧をしたゆり子は、散らかりっぱなしの部屋の真ん中で、掌の上の2つの指輪を見ていた。
出かける時間まで、あと5分ほどだ。
「うん」
立ち上がり、小さな抽斗の奥から指輪のケースを取り出す。
今の恋人の馳川に貰った指輪をケースにしまい、ハンドバッグに入れる。
そして、元彼の春山に貰った指輪を右手の薬指に嵌めた。
その時、スマートホンがJPOPを奏でながら震えて、メールの着信を知らせた。内容を確認したゆり子は、手早く返事を書いた。
ハンドバッグを持ち、パンプスを履いて外に出る。
雨は止み、雲の間から秋の空が顔をのぞかせていた。適度に湿った空気がひんやりと頬に気持ちがいい。
最初の一歩がいつもより大きくて、長いコートの裾が翻った。
最初のコメントを投稿しよう!