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体が冷えてきたので、ランニング用のジャージを着た。
ノートPCを開き、表作成ソフトで思いつく場所をまとめ始めた。
朝、会社に向けて部屋を出たところから順番に羅列してみる。
・駅までの道
・会社の最寄り駅
・最寄り駅から会社までの道
・自分の席と会議室が幾つか
・社員食堂
・トイレ
・帰りに寄ったデパート
・デパートのトイレ
いつどこで失くしたのか、まるで思い出せない。もう一週間も探しているのだ。
歩いたと思われるところは犬みたいに道路ばかり見て歩いたし、駅やコンビニやデパートなど、遺失物が届きそうな所には電話した。会社の机も、居残って徹底的に探した。部屋だって、本と本の隙間から洗濯機の裏まで探したのだ。
「やっぱり、排水管に入っちゃったんだ……」
だが、キッチンにしろ洗面台にしろバスルームにしろ、排水管にはトラップが着いている。指輪のような固い物が落ちたら音もするはずだ。気が付かないとは思えない。
「あ~あ、この地球上のどこかには絶対あるのに……ひどいよ。魔法か何かで呼び出せればいいのにな」
ゆり子はぶつぶつ言いながら表を作り続けた。
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