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お兄さんは、僕の膝を丁寧に治療をして、痛いのが飛んで行くおまじないまでちゃんとかけてくれた。
お兄さんは、とてもいい人だ。
僕は、お兄さんにお礼をしようと思ったが、あいにくそんなものなんて持っていない。
「あっ、クッキーがある!」
「クッキー?」
僕はリュックの中から、丁寧に包まれたクッキーを取り出して、お兄さんに見せた。
「美味しそうなクッキーだね、おやつかな?」
「うん、そのつもりだったんだけど…お兄さんへのお礼にするね」
「別に気にしなくてもいいのに」
「ううん、ちゃんとお礼はしなくちゃ」
頑として聞かない僕に根負けをして、僕にお礼を言いながら、クッキーが包んである袋をお兄さんは手に取った。
でもやっぱり…。
クッキーを外で食べるのを楽しみにしていた僕は、少し落ち込み、チラリとお兄さんの手の中のクッキーを見る。
そんな僕の様子を見ていたお兄さんは、ニコリと微笑んで僕に聞く。
「これは、僕がもらっていいんだね?」
「……うん」
「じゃ、僕の好きにしていいね?」
「………うん」
「そっか、それじゃあ、」
お兄さんは、僕とお兄さんが座っている間にクッキーの袋を広げると、こんなことを言い出した。
「一緒に食べようか」
目を見開く僕の目の前に一つのクッキーを差し出し、僕がそれをおずおずと受け取ると、お兄さんは満足げにして立ち上がる。
「飲み物欲しいでしょ?待っててね」
そう言うと、お兄さんは、家の奥の方に姿を消した。
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