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「さっきまでいたけど、美容院行ってくるって、マキが来る数分前に出ていったよ」
「そっか」
数少ない2人きりの時間。マキの心臓が速くなっていく。
「なぁマキ。もし俺が万が一退院できたら、今度こそ部屋に行かせてくれよ」
「な、なに、変なこと言ってんの」
「だって一度も入れてくれないじゃん。実家いたときは入れてくれたのに」
「いやだ。大体そんな、フラグみたいなセリフ言うなんて、おっかないことしないで」
「はは、冷てーの」
力なく笑うアキラに、マキはギュッと拳を握り締めた。
アキラは分かっているのだ。もう自分が長くないことに。
結局ろくに話せないまま家についたマキは、バイト先からのメッセージに気がついた。
「え、今から?」
病欠の同僚に代わり急遽出勤して欲しいという内容だった。いつもなら二つ返事で了承するところだが、今日はまだパズルピースが届いていない。予め入っている予定とは被らずに届くが、予定外の外出で受け取り損ねるのは避けたかった。
「『申し訳ありませんが、今日は先約が……』と」
今まで一度も不在になることなく受け取っているからか、届くか分からずとも不用意に留守にすることはしたくなかった。
きっともうすぐ、もうすぐパズルは完成するのだから。
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