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お昼になってカバンを開けた春真は突然大きな声で叫んだ。
「俺の弁当がない!!」
朝遅刻しそうになって慌てて家を出たから忘れてきたのだろう。
カバンや制服のポケットを探ったけど、財布も見つからない。
「まじか……。」
辺りを見回して友達の顔を見つけると、
「滝沢、金かしてくれ。
弁当も財布も忘れた。」
そう言って掌を出した。
「ごめん。
俺も今金欠で52円しかねえ。
明日になればバイト代入るんだけど。」
辺りを見回すけどみんなお昼を買いに行ったのだろう、お金を借りられそうな人が他に見当たらずに隣の1組へ向かう。
近くにいた生徒に、
「ジンいねえ?」
そう聞いた。
「高橋ならさっき出ていったぞ。」
「遅かったか。」
高橋 陣は1年のときのクラスメイトでクラスが別々になった今でも交流のある友達だ。
一度自分のクラスに戻ったものの、部屋中に広がるお弁当の匂いに耐えきれずに教室を飛び出した。
さて、どうするかな。
こんな時に行く場所が思いつかない。
屋上へ行ければ気持ちがいいだろうけど、屋上への扉は危険防止のために鍵がかかっている。
仕方がなく、昼休みに自由に出入りの出来る図書室へ向かった。
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