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人と話すのも苦手だし、争い事は極力避けたいからいつも誰かの顔色を伺ってできるだけ目立たないようにしてきたんだ。
自分を外に出すよりも、周りに従ったほうが楽だった。
だけどそのうち窮屈になって、息がうまくできない……そんな風に思うようになったんだ。
多分自分で自分を殻の中に閉じ込めたんだよね。
周りに合わせてるうちに自分が見えなくなって、自分がどういう人間だったかもわからなくなっちゃったんだ。
だけど体育の授業でハイジャンやった時に、バーを飛び越える瞬間、自分を束縛する全てから開放されたような気がしたんだ。
周りがどう思ってるかとかそんなの関係なくて、僕は僕なんだ!って閉じこもった殻の中から大空へ飛び立ったような……。
それが凄く気持ちよくて……。
大げさなんだけどさ。
だけどその時は本当にそう思ったんだ。」
祐樹は恥ずかしそうに笑った。
「すげーな。」
「えっ?」
「かっこいいよ。」
祐樹は戸惑いながらも嬉しそうに頬を赤らめた。
「自分の力で殻の中から飛び出すなんて、なかなかできねーよ。
俺なんかやりたい事一つ見つからなくてずっとグダグダしてるのに。」
祐樹は首をゆっくり横に振った。
「僕たちはまだ高校生だから、やりたい事なんて今すぐに決まらないよ。
だって世の中には楽しそうなことが沢山あるんだから。」
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